PROJECT STORY #1

2年目で貫いた「決断」。

自治体向けリースプロジェクト

リースはNTT・TCリースの源流ともいえるビジネスだ。通信機器に始まり、航空機や船舶、建物といった大型案件まで。その対象も、NTTグループはもちろん、一般企業、官公庁と幅広い。特に官公庁向けでは、LEDを使った街路灯などこれまでにない商材も手がけるようになってきた。一方で、この分野にはライバルも多い。競争に勝ち抜き、クライアントの期待に応えられるか。

NANAKO WATANABE

関東支店
※所属は取材当時のものです。
国際日本学部 国際日本学科 卒
2016年4月:
入社。関東支店に配属。一般リースの埼玉県担当チーム所属。主に官公庁やグループ会社にリースの営業を行う。

ライバルとの一騎打ち。

関東の某自治体へのPC・タブレット導入。その入札案件が舞い込んできた時、渡邊は奮い立った。「リベンジの機会がやってきた」。そう思ったからだ。

リース会社にも、もちろん競争相手がいる。渡邊が担当するそのエリアにも、手ごわいライバルがいた。しかも5年前にまったく同じ案件で敗北している。当時のリース契約が更新時期を迎え、再び一騎打ちの機会が巡ってきたのだ。5年前といえば渡邊が入社する前の話だが、それでもどうにか取り返したい。

渡邊が燃えたのには大きな理由がある。ディーラーがNTTグループの1社であること。ディーラーとは商材(このケースではPC・タブレットと回線)の提供元を指す。ややこしいのは、このディーラーはライバルにも商材を提供している点だ。同じNTTグループだからといって、当社だけと付き合うわけではない。ビジネスとなればあくまでも競争原理の中で取引先を選ぶ。フェアな姿勢だが、やはり割り切れない思いも残る。NTTと社名につく者同士、きちんと条件面で折り合った上で双方に嬉しい結果になれば、それがグループ全体にとっても最良だ。入社2年目。渡邊の熱い夏が始まった。

リースの仕組み

初めて、自分だけの意志で。

入札とは、詰まるところ価格の競争だ。自治体から示された納入台数などの条件を満たしつつ、より金額を下げたほうに問答無用で軍配があがる。自治体が設定した予算を超えた場合には、入札不調、つまりどちらも負けとなる。通常、予算が前もって告知されることはない。

渡邊は過去の事例を徹底的に調べ上げ、ライバルが出してくるであろう価格を推測した。その上で、上司と議論しながらこちらの価格を詰めていく。万全を期して臨んだ入札。ところが結果は「落札者なし」。2社とも、自治体の設定した予算をオーバーしてしまったのだ。

結果を知らされた途端、ライバル会社の担当者はさっさと退席した。この案件からは手を引くという意思表示。だが渡邊は動かなかった。引き続き案件に関わるとなれば、すでにギリギリまで調整済みの価格をさらに引き下げるしかない。そんなことが可能なのか。入社2年目の渡邊にしてみれば、ひとりで判断するには危うい場面。それでも渡邊には、持ち帰って上司に相談するという考えはなかった。やるしかない。最初からそう腹をくくった案件なのだ。渡邊にとっては、入社以来はじめて下した「決断」だった。

絞り込んで、滑り込め。

渡邊はすぐさま自治体との打ち合わせを持った。あらためて見えてきたのは、とことん切羽詰まった状況だ。納入予定のPCやタブレットは市民向けの講座で使うもの。開催は1か月後で、すでに開催告知も終わっている。納入がなければ、自治体が市民を裏切ることになる。一方で、予算や導入台数は一切変更がきかない。

PCやタブレットのバージョンを落としてはどうか。それが渡邊の提案だった。講座は初心者向けだということがわかった。それならば高度な機能はいらない。性能を絞り込めば、予算内に収まるかもしれない。渡邊は自治体から吸い上げた情報をたずさえて、足しげくディーラーであるグループ会社へ通った。新たに機種を選び直しても、今度は在庫がなかったりする。別の機種をあたったり、ディーラーの先にある調達先を変更したり。それを繰り返すうちにも、時間はどんどん過ぎていく。渡邊は焦った。納入が確定しなければ契約も成立せず、ほんとうにライバルに勝ったことにはならない。何より、自治体の期待に応えられない。

講座が開催される、その前月の最終日。会場となる公民館に、30台のPCとタブレットが並んだ。まさに滑り込みセーフ。「こんなに苦労させて」。セッティングに立ち会った渡邊は、その景色を感慨深く眺めた。

渡邊のある一日

8:00
朝刊に目を通しながら、To doリストの作成。
10:00
メールで届いた入札情報をチーム内共有。事務処理についての指示。
11:00
ディーラーとの打ち合わせ。
12:00
出先でランチ。
13:00
自治体とのアポイント。契約書類の確認。
15:00
帰社。社内決裁文書の確認。上司への案件相談。
17:30
退社。

ひとつひとつ、信頼を重ねて。

「もっと意志を持て」。この案件を担当するまで、渡邊がたびたび上司から言われた言葉だ。仕事が受け身になっていることは自分でもわかっていた。「NTT」の入った社名で、入札への誘いは向こうからやってくる。金額も上司に相談すれば決まってしまう。これじゃダメだと思いつつ、慣れない仕事に忙殺されて変わることができずにいた。

だが、今回はついに自分の意志を貫いてみせた。ライバルに勝ちたい。グループ会社と強力なタッグを組みたい。自治体の期待に応えたい。さまざまな想いを束ねて、大きな力にすることができた。ただ、想いだけではビジネスは進まない。勝因はコミュニケーションだったと渡邊は振り返る。自治体やディーラーととことん会話を重ね、すぐに動くこと。その行動がやがて、信頼関係へと変わっていく。案件のあとも信頼関係は残る。それがきっと、これからの渡邊の仕事を変えていくはずだ。